映画『ガチ☆ボーイ』の主人公・五十嵐良一は、
“高次脳機能障害”を負っている設定だ。
この映画のシナリオ作り・監督にあたって、
『高次脳機能障害をどう描くか』は至上命題だったのである。
そのためありとあらゆる文献に目を通して勉強したし、
この障害の治療に第一線で取り組んでいらっしゃる
橋本圭司医師と出会えたことは非常な幸運だった。
少し難しい話になるが、今回のオフィシャらない話では、
高次脳機能障害とガチ☆ボーイの関わりについて、
自分の知る限りの知識で、
そのさわりだけをご紹介しようと思う。
(本気で書き始めると論文になってしまうので)
今では当たり前となっている
数多くの病・障害もかつてそうであったように、
この高次脳機能障害もまた、つい最近に至るまで、
一般は愚か医療業界に於いてさえも
極めて認知度が低い障害だった。
その割に、実は我々の生活に
とても身近に存在している障害で、
いつ誰の身に起きても不思議ではないのである。
2004年の厚生労働省の調査で
全国で約30万人の患者がいる事がわかったが、
潜在的な障害者はさらに多いと言われている。
自分や身近な人が、実は高次脳機能障害であることに
気がついていないケースも多々あるのだ。
高次脳機能障害を理解するためには、
脳そのものに関する基本的な機能の話から
掘り起こす必要がある。
脳には大きく分けて三つの機能がある。
1.手足を動かす運動機能
2.臭い、手触りなどの知覚機能
3.認知、記憶、言語、感情などの高次脳機能
この高次脳機能に障害が起きた時、
『高次脳機能障害』という事になる。
脳の部位の中でも主に前頭葉と側頭葉が大きく関わっていて、
ここに何らかの損傷をきたした時に
起こりうる障害と言い換えてもいい。
前頭葉は判断、注意、情緒、計画など。
側頭葉は記憶、聴覚、言語など。
高度な頭脳を持つ人間ならではの機能が
集結した部位である。
では「何らかの損傷」とは何か。
たとえば脳外傷。
脳外傷とは、文字通り脳への外傷のことである。
タッパの中に入った豆腐を思い浮かべてみる。
そのタッパを地面に落とすと、その豆腐は大きく崩れるか、
そうでなければ形を保ったまま無数の細かな亀裂が入る。
頭蓋骨に守られた脳にもまさに同じ事が起こって、
頭部に強い衝撃が加わると、脳に無数の細かな亀裂が入る。
こうして前頭葉と側頭葉が損傷してしまうというわけだ。
脳外傷の原因の8割は交通事故と言われている。
交通事故ならいつ誰の身に起きても不思議ではない。
すなわち高次脳機能障害もまた、
いつ誰の身にふりかかるか知れない。
五十嵐君の場合は、自転車で転倒して脳に衝撃が加えられ、
前頭葉と側頭葉を損傷したと考えられる。
脳外傷以外にも脳卒中や、低酸素脳症、
ビタミンB1不足で起こるウェルニッケ脳症など、
様々な方法で脳は損傷する。
損傷した脳の部位によって、高次脳機能障害になり得るのだ。
小泉 様
はじめまして。地元のNPO団体が「高次脳機能障害」をテーマの一つにしたイベントを今年の秋頃に開催する予定です。そのなかで『ガチ☆ボーイ』の上映も考えていますが、自主上映の窓口がわかりません。監督に直接お聞きするのは失礼と存じますが、連絡先を教えていただけると助かります。どうぞよろしくお願いいたします。
投稿情報: 庄内ドキュメンタリー映画友の会 | 2011年2 月11日 (金) 08:52