宇宙そのものについての書籍は数あれど、
『んじゃ宇宙飛行士になるには一体どうしたらええのん?』
という疑問に答えてくれる本にはなかなか出会えなかったので、
この本が出た時にはこれだ!って感じがした。
この本の内容には大きく分けて三本の柱で構成されている。
1.宇宙飛行士候補の選抜方法
2.宇宙飛行士候補の訓練方法
3.国際宇宙ステーション(ISS)での仕事と生活
1は、油井亀美也さん、大西卓哉さん、金井宣茂さんの
三名を選抜した2009年度の宇宙飛行士選抜を中心に、
その試験内容と審査基準を紹介する。
なかなか知り得なかった情報なので資料としても貴重だ。
興味深いのは長期滞在適性検査。
ISSを模した窓のない閉鎖施設に10人の応募者が一週間缶詰になって、
24時間監視された状態で様々な課題に取り組む。
トイレとシャワー以外はずっと監視されっぱなし。
ベッドはカーテンで仕切られてはいるが、
腕時計型のセンサーを身につけているので、
熟睡してるかどうかまでバレてしまう。
宇宙船と同様のストレス下に置くことで、
面接ではなかなか出てこない、
ついポロッと出てしまう素の部分を見るのだと言う。
当然のことではあるが、私はこの選抜の様子を
『もしもこの選抜試験を自分が受けていたなら』
という無駄な妄想をしながら読み進めたわけで。
おそらく読者諸賢もそうなることだろう。
厳しい倍率をくぐり抜け上記の選抜を突破しても、
その人はまだ正式な宇宙飛行士ではない。
宇宙飛行士の『候補』になっただけなのだ。
2は、厳しい選抜の中から選ばれた宇宙飛行士候補者が
どのような訓練を経て宇宙飛行士になるかを紹介している。
その一つが National Outdoor Leadership School(NOLS)
と呼ばれる訓練方法。
日差しが照りつける夏山や雪が吹き荒ぶ冬山などの環境下、
8人前後の少人数編成で寝食を共にしながら頂上を目指す。
そこでは予測もしない事態が頻発する。
追い込まれた時の判断力を鍛える訓練なのだと言う。
印象的だった宇宙飛行士の言葉。
「たとえ打ち上げ時や着陸時にトラブルが起こっても、
最後の瞬間まで助かるための作業に没頭するので、
恐怖を感じている暇はないだろう」
それぐらいになるまで、徹底的に訓練するのだ。
もう一つ我が身に染み入った言葉。
「失敗を恐れるリーダーは細かいところまで指示しすぎてしまう」
「トップは経営戦略を考えるべきで、手順は部下に任せるべき」
なるほど、なるほど、然もあらん。
さて、上記の訓練を乗り越えた宇宙飛行士候補者は、
晴れて宇宙飛行士となった。
その後は、宇宙でのミッションを
いつ任命されてもいいよう準備と訓練を繰り返しながら、
ひたすら待ち続ける。
もし幸運にも宇宙でのミッションに任命された場合、
それは一体どういうものになるのか。
3では2009年3月から同年7月末にかけての、
若田光一さんのISS長期滞在時の話を中心に
ISSでの仕事と生活の様子を紹介している。
興味深いのはロシアとアメリカの流儀の違い。
この二国は同じ宇宙開発をしていても、
これまでまったく違った道を歩んできた。
その文化の違いの話などを通して、
メディアからはなかなか知ることの出来ない
ISSの内側の様子がうかがい知れる。
ちなみに、その人が周囲に配慮できる人間かどうかを
見極めるには、その人のトイレの使い方を見れば
一目瞭然なのだとか。
みんなには言ってないけど
なにげに宇宙飛行士を目指している方、
またはカミングアウト目前の方、
宇宙飛行士を目指しているという
気分に浸りたい方に是非。
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