それにしても脚本を書く作業というのは苦しい、まことに。
もはや苦行と言ってもいい。
脚本家というのは毎日こんな事をやってるのかと思うと、
頭があがらない。
いくらかの経験から言えることだが、
脚本は一人で書かない方がいい。アイディアが単調になる。
誰かを中心としたチームで書いた方がいいと思う。
最近は随分変わってきてはいるものの、
いまだに日本映画は一人の作家に丸投げする傾向が根強く、
チームで書くという文化がいま一つ確立していない。
ハリウッドでは書き直し専門の脚本家がいたり、
場合によっては登場人物それぞれに対して
作家が一人ずつついてることさえある。
日本映画は脚本を書き直す人、校正する人、
或いは意見・指導する人たちの価値を理解して、
仕事としてそれ相応の対価を支払うことを
はっきりと体系化した方がいいと思う。
これはもちろん、自戒の意を込めて提言している。
一度やってみればわかるが、
脚本の感想をただ言うという単純作業だけでも
実は簡単な事ではない。
漠然と面白いかつまらないかを言うのは誰にでもできる。
でも、なぜ面白くてなぜつまらないのかを
指摘するのは言葉の響き以上に難しいものだ。
どうすれば改善できるかまで意見するとなれば尚更である。
だから、少なくてもいいから、いくらかは払う。
最初はそんなところから始めればいい。
そうすることで映画のクオリティが上がるだけでなく、
そこからまた新しい才能を発掘できる。
若い作家の新規参入が難しい脚本家という世界で、
これは非常に重要なことだ。
日本でこういう動きが拡がらないのは、
慢性的な製作費不足が影響していると言えるだろう。
人を雇う余裕がないばかりでなく、
脚本家に対して十分な対価が支払われないために
自分が書いたという名誉(つまりクレジット)を
重要視するようになり、
その名誉はできれば他の人と分けたくない、
という発想に陥りやすい。
じゃあなぜ製作費が不足してるのか。
まあこれを深く掘り下げていくと、
日本映画産業そのものの問題に関わってくる。
話に収拾がつかなくなりそうなので、
これ以上風呂敷を広げるのはやめておこう。
日本映画産業が抱える問題については、以下のサイトに
非常にわかりやすく解説されているので、興味のある方は一読を。
これは私と同じ職場の方が書いているブログである。
右のカテゴリー欄から日本映画産業論へ行くといい。
少なくとも、これから映画の仕事に関わろうと
考えている人は読むべきである。
この状況を打開するには、映画の世界に入るより
政治家になった方が早いと思えてくる事だろう。
いや、たぶん、実際そうだ。
どっちにしろ茨の道だけどな!
ちなみに私は映画監督として認識されてはいても、
タイミングさえ合えば、
自分が監督をしない映画の脚本の書き直し、
校正、意見する仕事を請け負う準備がいつでもできている。
もちろん社外からも大歓迎だ。
いやむしろ社外に向けて言いたい。
さあ来い。抱きとめてしんぜよう。
<2010.11.28. 追記>
松下式さんやコバヤシさんの言うように、
確かに脚本を書くのが楽しいという人たちはいる。
だからこそこの仕事についたのであろう。
うらやましい限りだ。
「脚本を楽しみながら書ける」というスキルは、
私がこの先会得していきたいスキル
ランキング第二位に入っている。
ちなみに第一位は「速読」だぞ。
第三位は「達筆」だぞ。
何年か前の『情熱大陸』で
作家の川上未映子さんが
「書く作業は全然楽しくない」と
言い切っていたのが印象的だったなー。
私の場合も『楽しい時もある』と言った方が正確だろう。
ただその、フィーバーするまでがやたら苦労するわけで。
脚本って苦しいモンなんですか?
楽しみながら書く人もいたので、
投稿情報: 松下式トレーニング 最強筋トレ | 2010年11 月 4日 (木) 03:14
オダキョー見ました!
面白かったです。
クスって笑えるシーンもあり、ほのぼのシーンもあり小泉監督らしさが出ていたと思います。
投稿情報: どっこい | 2010年11 月 5日 (金) 09:23
観客、視聴者、FANなど複数で多くの人が観るので、作り手、特に脚本は多くの人のセリフを創り、構成し、まとめるので、Hollywoodの様に分業制、専門性にするのは大事な提案だ、と思いますね。
根本は脚本にお金を払うか、でしょうね。
投稿情報: ハリマオ君 | 2010年11 月16日 (火) 00:47
昨日、エレベーターで「タイヨウのうた」好きですーと話しかけたアニメ監督やってるコバヤシです。脚本の話、興味深く読ませてもらいました。アニメだと本読みというのでみんなで揉む事が多いです。僕はBECKとパラキスはひとりで全話シナリオ書きましたけど(本読みも無し)一人で書くと伏線は張り易いですね。あとキャラの統一も。確かにアイデア出しはみんなでやった方が面白いと思いますが、まとめるのは一人の方がいいかなーと思います。僕はシナリオ書くの楽しいです(笑)。アニメの場合もかなりシナリオに貢献しても、なかなか脚本にクレジット載せてくれませんね。権利やお金が絡んでくるからでしょうかね。ここはアメリカを見習って貢献した人の名前は列記してほしいところです。野村さんといい久仁生さんといいロボットは才能が集まってて凄いですね。ながながと書いちゃってどーもでした!
投稿情報: コバヤシオサム | 2010年11 月16日 (火) 10:12
オダキョーは、
普通の女の子が霊能力は無いけれど、霊能力の様なものを人は善意に持っていて、同じ様に人助けができる、というパロデイーで、
よくある超能力ものでも、スーパーマンでもなく、Heroでもないのに、
観終わった後に、超スーパー爽快感があるのは、オダキョーに霊能力があるのかも知れない?!
投稿情報: ハリマオ君 | 2010年11 月30日 (火) 10:29